おいでなすったー

テーマとか宣言すると一夜坊主で終わることがわかったので、そういうのやめて、書き散らかしていきます

生徒会に憲法はあるか

武蔵高校中学校の記念祭にお呼ばれして行ってきた。過去の小委員長を呼んで座談会をやる、ということで、引っ張られてきたOBが3人。現役生が93期でわたくしが73期、先輩が57期と53期。

40年くらい前と20年前と現在を比べる形になって、だいたいコンプライアンスが高まっていった過程がうかがい知れた。現在の体育祭に棒倒しはなく、夏休みは案外きちんとした宿題が出るらしい。

40年前には、修学旅行があった。

(53期先輩)「ごく普通に、京都・奈良へ行って、これなんか意味あんのかなあと思ってたけど、2年後になくなったから、まあそうだろうなと思った」

(現役氏)「資料を当たって調べたのですが、不祥事があったそうですね」
(57期先輩)「酒とかでしょう。当時はそういうのはいかようにもやりようはあったのだが、たぶんアカン酔い方をしたやつがいたんだ」

(73期オレ)「え、僕その『意義がどーたら』って話しか聞かされてなくて、そういうもんなんだーくらいに思ってましたけどww」

武蔵高校では、ただ漫然と集団で観光地を見て回るという修学旅行では、本来の意義が見失われているという状況を鑑み、これを廃止することとした。どのように見失ったのか、その具体的な態様は、明らかにされていない。

現役生の間で、修学旅行を復活させようという運動が行われているのだそうだ。曰く、修学旅行が無くなった経緯の調査から始め、様々な検討を重ねたうえで、生徒総会を開催したのだという。

(社会に出て視点が歪んだ73期)「え、校友会規約に『生徒総会』というのが定義されているのですか?」
(現役氏)「あります」

あるのかよ!そんなこと、気にしたことがなかった。

5~6人くらいの小グループに分かれて自分たちで企画を立てて、長期休み中に実施することを考えているという。希望者だけの自由参加とするか、全員参加とするかで、意見が分かれているとのことで、それはまあそうだろう。友達いないやつはどうするのか問題とか、いろいろ考えられる。

議論を主導している層としては、機会を与えられることで思わぬ収穫が得られることがあるかもしれないから、こういうのは全員参加にするのがいいと思っているんだ、という考えなんだそうだ。若い。

「お話を聞いていると、仮に全員参加とするのであれば、『反対する人間もいるけど、俺たちの意志としてこうと決めたので、皆でそれをやる』という意思決定を校友会としてしたい、ということなんだけど、それって“決めるためのルール”がなければいけないと思うんだけど、そういうのあるんだっけ」

ないと思うのだ。委員長などを決める選挙のルールだけは(おそらくそれが表面的には実際的問題を伴って意識されるので)細かく定められていて、全会一致でなくてもリーダーを決めることはするものの、そいつにどれだけの権限があって、皆がどの程度従うかは、「例年こうしている」という常識と、リーダーの生徒個人の器に依存していた。

毎年、予算編成期になると、各部が予算を取りあう「予算折衝」が行われていたのだが、「この塩化ナトリウムというのは、食塩じゃダメなんですか?何がどう違うんですか?」みたいな叩き合いをやっていた。意思決定の手法は、ボコボコに論破されて戦意が砕かれた部が予算要求を引き下げる調整を全体の超過額がなくなるまでやる、であった。

こないだ同級生と飲んだとき「どうして俺たちはあんな『プチ政治』みたいなことをしていたのか?」と話し合ったが、酔ったのでよく分からなくなった。

生徒全体が非定型な話題に対して意思決定をして全員がそれに従う、という手続きがあるならば、それは生徒会の憲法的なもの*1に書かれているはずである。しかし、中学校や高校は、生徒が生徒に対して強制力を行使するということを基本的には認めていないはずだから、主権者が国に対してどんな権利を与えるかを記述した憲法のようなものを、生徒会において作るのは、色々な問題が見えてきてしまって、難しいはずなのだ。

修学旅行の件では、生徒総会を開いて本当はそこで「決議」を行う予定だったが、実際には、修学旅行委員会を設置して、継続的な議論やプレ修学旅行の試行などを行っていくことにしたのだそうだ。詳細は聞いてないけど、きっとめっちゃモメたんだと思う。

いずれにしろ、最終段において、自分たち全員が従う学校行事を自分たちの意志で新設するという決定を行うならば、学校当局との調整も含めてとても高等な仕事が要求されることになるだろうと思う。手続きも権限もないことについて調整して確たる成果を得るというのは、とても大変なことだ。

この話で驚くべきは、自分がこの問題に取り組んでも自分の代で修学旅行に行ける見込みはないということが分かっていて取り組んだ生徒が数代にわたって居るということである。最近の若い人は、こういうところがすごいよね。

っていう話を、取り壊しになる校舎のOB向け展示の部屋で話していたら、88期?の後輩氏に「校友会規約に生徒総会の定義というのはないはずです。僕が改編をしましたから。恐らく、特別委員会に関する規定を援用して、生徒全員を構成員とする特別委員会を開催するという建付けにしたのではないでしょうか。」と言われ、お、おおう。となった。

*1:武蔵で言うと校友会規約